・・・・・・・・・・・・・・リゼンブール ロックベル家・・・・・・・・・・・・・・
ガンッ
「っでッ!!」
「あ、ウィンリィ。ただいま。」
「お帰りアル〜♪・・・で、アンタまた私の機械鎧壊して帰ってきたわけ!?」
ロックベル家では、もはや定番といえる挨拶(?)が行われていた。
「んだよッ!いつもより調子悪ぃから
また前みたいにネジ抜けてんのかと思っただけだ!」
少年の名はエドワード・エルリック、15歳。
12歳にして国家資格を取った天才少年錬金術師。
そしてその傍らにいつもいる、大きな鎧の少年・アルフォンス・エルリック、14歳。
やはり兄弟か、彼も錬金術師であり、その腕はなかなかのものである。
そして先程からエドと言い争いをしている少女・ウィンリィ・ロックベル。
リゼンブールにあるロックベルという機械鎧[オートメイル]技師だ。
そしてまたエドが機械鎧を壊してきたのかと激怒中。
「あら、アンタにしては珍しいわね。」
「また動かなくなっても困るから、一応な。」
そんな他愛もない話をして、
今度はどのくらい修理に時間が掛かるかを聞く。
すると、「今夜一晩あれば明日には大丈夫よ」と言われたので、
とりあえず一日だけでも、故郷のリゼンブールを散歩することにした。
「ひっさしぶりだなぁ〜・・・此処も。」
「うん、やっぱり旅をしているとなかなか帰ったり出来ないもんね。」
「ていうか、帰ってる暇があるなら賢者の石の情報探ししたほうが賢いだろ。」
「もう、兄さんたら!」と怒る弟の言うことは、
少々気の毒だがこの際無視することにした。
ふと、エドの足が止まる。
「どうしたの?兄さん。」
「アル、お前先帰ってろ。俺用事あるから。」
「え?リゼンブールに用事?」
「あぁ。・・・此処でしか、果たせない用事。」
そう言った時のエドの目は、どことなく悲しく見えた。
それを見てアルは「それじゃあ、帰って鎧でも磨くかな。」と言って帰っていく。
そんな弟を見て、「やはりよく出来た弟だ。」と内心感心する。
それから暫く歩くと、
小高い丘の上に墓石が見えてきた。
その墓石には『・』と掘られている。
その墓石の前まで歩いてきたエドの左手には、ブロディアの花が握られていた。
「・・・よう。。約束通り、
ブロディアの咲く季節に帰ってきてやったぞ。」
そう言い捨てたときのエドの表情は、
悲しみとも悔しさとも取れない、険しい顔をしていた。
「お前もヤな奴だよなぁ・・・
お前が生きてる間に俺が旅に出て、ブロディアの咲く季節に帰ってくるなんて
・・・到底できっこない約束を、俺に押しつけやがったんだからな。」
−−−−−−−−−−七年前・リゼンブール
「おぉーい!ウィンリィー!!」
「あっ、エドー!アルー!遅ーい!!」
「ごめんね、ウィンリィ。兄さんが朝ご飯の牛乳なかなか飲まなくて・・・」
「お、おいっ!アルッ!!」
小さな少年二人と、少女が二人。
少年達の名はエドワードとアルフォンス。少女はウィンリィ。
三人とも幼馴染みだ。そして、もう一人。
「おやぁ?エドくんはまーたそんなワガママを言ってるの?」
「あっ、!」
「、おはよう。」
「おはよう。アル。」
只今アルと朝の挨拶を交わした少女は・。
他の三人の幼馴染みで、三人のお姉さん的存在だ。
何と言っても、彼女は14歳なのだから。
「わがままなんかじゃねぇよッ!」
「おんやぁ?じゃあ飲まず嫌いかな?」
「違ぇって!」
そんなやり取りをしながら、今日の目的地へと足を運ぶ。
ウィンリィもアルも、もちろんエドもの後ろから着いてくる。
特にエドはを好いていたため、見失わないようにと必死だ。
暫くして、の足が止まる。
「ほ〜ら!今日の目的地だよー」
「うわぁ・・・キレイ・・・」
「すっげぇ・・・」
「うん、すごい・・・」
そこは、一面花畑だった。
とても綺麗に、皆そろって咲いている。
そんな光景にエド達はただ見入ることしかできなかった。
「この花はね、ブロディアっていうんだよ。」
「「ブロディア?」」
「ブロディア?お母さん達から聞いたような・・・」
「あ、ウィンリィはやっぱり聞き覚えがあったね。この花はね、
葉の部分が薬の調合によく使われるのよ。」
「じゃあ、薬草?」
「んー、そんな感じかな。」
アルの疑問に、少し曖昧に答える。
ウィンリィは「そうだ!薬になるんだ!」と思い出していた。
そしてエドは・・・
「・・・でも、どうしてオレ達をここに?」
「んー・・・それはねー・・・
エド達に、知ってて欲しかったから・・・かな。」
「え?」
の答えに、少し拍子抜けして間抜けな返答をしてしまう。
そんなエドの様子を少し笑って、が続ける。
「ここね、村の人も結構知らない人が多いんだー・・・
・・・だからさ、いつか忘れられちゃいそうで・・・。
エド達なら、きっと忘れずに、次の世代まで伝えてくれるだろうなぁって思って、さ。」
そんなの顔は少し憂いを帯びていて、
エド達には、そんなが妙に悲しそうに見えてしまった。
そしてエドは、『何故そんな顔をするのか』ではなく、
『何があったのか』が、気になっていた。
それからエド達は、に村の近くの色々な場所を教えて貰った。
薬になる花や草の生えている場所、昼寝に最適な場所、
村で一番月が綺麗に見える場所・・・
数えだしたらきりがないくらいだった。
−−−−−−−−−−六年前・リゼンブール
その日、はエド達に「最後の場所を教える」と言って
朝早くから出かけていた。
「、まだなのか?」
「もーちょっと!だから頑張って着いてきて!」
いつもよりハキハキしているに少し戸惑いながらも
エド達は険しい山道を必死で歩いて着いていく。
「ほら、着いた!」
その声と共に見えたのは、一面、様々な花に覆われた花畑。
前に行ったブロディアの花畑よりも、ずっと広く、ずっと綺麗だった。
「此処ね、私が作ったんだよ。」
「えっ、が!?」
「なぁにぃ?エド。そんなに驚かなくたっていいじゃない。」
「でも驚くよ・・・これってが手入れも世話もしたの?」
「そうだよ。毎日朝早く此処登って、水をあげて、手入れして・・・
何年もかけて、作り上げたんだよ。」
それは、人の手で作られたモノなのかすら危ういくらいで。
しかも、それがこのの手で作られたモノなのだから、余計に吃驚だ。
しかし、一つ腑に落ちない点があった。
「ねぇ、でもどうして私達に此処を見せてくれたの?」
「そうだぜ!それに、“最後の場所”って・・・」
「・・・あのね、みんな。私ね・・・
・・・セントラルに、行くんだ。」
「「「!?」」」
その言葉に全員絶句した。
昨日までずっと一緒だったが?セントラルへ?
そんなことを言われても、実感も何もあったものじゃない。
「セントラルにって・・・いつ!?」
「明日。セントラルにある医学学校を受験して受かって。
寮生活だから、早めに来た方が・・・って。」
「そんな!急すぎるよ・・・」
「そうよ!私達、もっとと一緒に・・・ッ!」
思わず泣いてしまうウィンリィ。それに連なってアルまでもが泣いてしまう。
エドは、好きなこの前で泣くまいと、必死に涙を堪えていた。
エド達は、“人が居なくなる”辛さ・悲しさを知っている。
だから余計悲しくなってしまう。
「そんな、みんな泣かないでよ!」
「だって・・・だってぇ・・・」
「僕たち、に会えないなんて嫌だよぉ・・・」
「・・・ね、聞いて?
別に、一生会えなくなるわけじゃないよ。
みんなが大きくなったら、私の居る学校を訪ねれば良いんだよ。
・・・そしたら、また会えるでしょ?」
ニコッと笑う姿が優しすぎて、逆に涙がこぼれ落ちてくる。
必死で拭えど、止まらぬモノは溢れてきた。
そんな時
「だったら!!」
「「「!?」」」
エドが、大きな声で叫んだ。
俯いて、必死に下唇を噛んで涙を堪えて続ける。
「だったら・・・約束しろよ!絶対また会うって・・・ッ!」
それから、一呼吸置いて、が話し出す。
「うん・・・そうだね、約束。
・・・エド。私が療を出るのは三年後なの。だから・・・
だから、三年後。ブロディアの咲く季節に、ブロディアの花畑で待ってる。」
その言葉を最後に、その場にいた子供達は、
みな大声で泣き叫んだ。
悔いの残らないように。
そして翌日、はセントラル行きの列車へ乗る。
別れ際も、ウィンリィが泣き出してしまって、出発時刻ギリギリまでなだめる。
そして、
『大丈夫だよッ』
そう一言言い残して、の乗った列車はセントラルへと向かっていった。
エドは、悔しいくらい清々しい表情で、列車を見送った。
それからというもの、大体月に一回のペースで
リゼンブールとセントラルで、手紙の交換をしていた。
いつも一番最初に書くのはエドで。
そして、送り返されたときの文頭も、必ず『エドへ』と始まっていて。
そんなことが、ずっと続くと思っていた。
それから数ヶ月、また今月も手紙を出した。
そろそろ返事の来る頃だと、エドはそわそわしながら
ロックベル家を歩き回っていた。
「もぉー!エド邪魔!!」
「なんだよ!うっせーな!!」
「ま、まぁまぁ二人とも・・・」
三人が揉めているところに、ピナコが入ってくる。
そして、少し暗い面もちで話し始める。
「いいかい、アンタ達。よくお聞き。
・・・これから言うことは嘘じゃあないよ。全部、本当のことだ。」
その時の内容は、今でも忘れない。
が、病気で昨日亡くなったと言うこと。
元々、はその病気に気付いていたこと。
その病気は不治の病であったこと。
そして、最後まで、が約束を守ろうと、必死に生きようとしていたこと。
すべて聞き終えて、最初に口を開いたのはエドだった。
「なんよ・・・何でだよ!!『大丈夫』?
全然大丈夫なんかじゃなかったじゃんかよ!
約束だって・・・三年後に花畑だって、嘘だったじゃんかよぉッ!!」
無我夢中で叫んだ。
今の気持ちを振り払いたくて。その事実を認めたくなくて。必死に。
「エド・・・アンタの気持ちはよくわかる。
・・・此処にアンタ宛ての、からの最後の手紙がある。」
ピナコが取り出したそれは、
いつもが手紙を返すときの便せんで。
ピナコから受け取ると、エドはかぶりつくようにその手紙を読んだ。
『拝啓 エドワード・エルリック様
こんな風に手紙を書くのは初めてだね。
それでね、聞き分けのあまり良くないエドに説明しておくね。
私が病気だったとか、そういうことはピナコばっちゃんから聞いたよね。
私が病気に気付いたのは、エド達にブロディアの花畑を教える一週間前だったんだ。
知ったときはショックだったけど、直ぐに『いい思い出を』なんて思ってね。
だから、みんなに私の知ってる全ての場所を教えたの。
それから、エド。ごめんなさい。
約束、守れなかったね。私、エドが手紙読んでる頃天国に逝っちゃってる。
三年後なんていわずに、一年後とかなら守れたかな?
ブロディアの咲く頃に、またエド達と会いたかったんだけどな。
ウィンリィ達にも『ごめん』って、いっといてね。
あと、この手紙には一つ、贈り物を付けてあります。
それは、思い出の花です。
そして、それは私の思いです。
きっと貴方も同じ思いだったと、信じています。
From ・』
そしてその手紙を読み終わってから、
片手に手紙を持ち、俯くエド。
そしてピナコは、手紙と共に送られてきた『贈り物』をエドに渡した。
それは、エド・アル・ウィンリィにとって、忘れられないモノだった。
それは ブロディアの 一輪の花
「ブロ・・・ディア・・・?」
「そうさ。それが、手紙と一緒についてきた『贈り物』だよ」
そのブロディアの花は、とても立派に咲いていた。
きっと、宅配便に出す直前まで、いけてあったのだろう。
「でも・・・これが、思いって・・・」
「・・・ねぇ、それ・・花言葉じゃない?」
「あっ・・・花言葉・・・そうか!そうだよ兄さん!!」
ウィンリィが気付き、アルが気付く。
そして、アルが叫んだ瞬間、エドは一気に駆けだし自分の家へ。
残った三人は、ただ走っていく背中を、見つめるほかなかった。
それから、家へ帰って。
必死に『花言葉』についての本を探した。
そして、本棚の一番奥に、それらしき物を発見した。
急いで手に取り、パラパラとめくっていく。
そして、ブロディアの写真が見えた所で、紙をめくる音は止む。
「ブロディアの花言葉は・・・」
ブロディアの花言葉は
淡い恋
++++++++++++++++++++
「・・・ブロディアの花言葉・・・か。お前も・・オレも、素直じゃなかったな」
そう墓石に向かって言う。
その背中は寂しく、そして強く見えた。
「オレ・・・アンタよりもデカくなったぞ。
・・・それに、アンタが死んだ時と同じ歳。
オレがもっと早く・・・伝えてればな。
早く生まれるなんて、無茶な話なんだからさ。」
夕暮れ時
夕日が眩しく、丘を照らした。
そろそろアルやウィンリィ達が心配するな、と思い帰ることにする。
墓石に背を向けて、立ち去ろうとしたとき、ふと思い出したように言う。
「・・・こんな身体んなって、ごめんな。
お前が一番、俺達の身体のこと心配してたのになぁ・・・」
それだけ言って、ロックベル家へ帰っていく。
『・・・わかってるんだったら、最初に謝りなさいよね。』
エドが去った後の墓石には
ブロディアの花が置かれていた。
翌日、エドとアルは再び旅へ出る。
そして、ウィンリィがの墓石へ行ったとき、
ブロディアの花があった。
しかしそのブロディアは、枯れることも、しおれることもなく
立派に、咲いていた・・・
+++アトガキ
ていうか言い訳ですね(苦笑)
苦笑いで済めば良いんですけど済まされません;;
ヒロイン死んでるし、エドはあんまり登場しないし無駄に長いし;;
しかも展開がすごい早くて何が何だかわかりませんし;;
花言葉とかって結構やってみたいんですよね。
ちなみに、花言葉って結構あるみたいなんで
ブロディアにも他の意味があるかもしれません。
あくまでこれは管理人調べですので。
気になるのでしたら、探してみては いかがでしょう?
2004.10.9