こわいわ、ほんとこわい。
さいきょうおねぇさま!
「っ」
「ゴフッ」
みつかった!
やばい、また二日酔い…!
後ろから聞こえた声に、思わず肩が震えて、むせた。
「なんで場所が…!」
「可愛い可愛いのことは何でもわかるわよー」
「怖いです!めちゃくちゃ怖い!発信機かなんかつけてません!?」
毎回毎回飲み会に誘われて、
付き合わされるたび強くない自分は二日酔い。
当の自分の上司・松本乱菊は何故か元気。
最近ではなるべく被害を減らそうと夜には逃げていたのに。
こうもあっさり見付かると、若干恐怖さえ覚える。
「今日は付き合いませんよ!」
「えー」
「二日酔いはうんざりですから」
「何よぅ、いいじゃない。と私の仲でしょ?」
「誤解招きそうだからやめてください!」
このひとは!
人の話は聞かないし、意見はまあ大概通らない。
ある意味での最強なお姉さまなのだ。
「行きましょ!ね、ね!」
「いやー!」
二日酔いはいや!
ついでに阿散井副隊長と檜佐木副隊長に絡まれるのもいや!
誘うなら吉良副隊長を連れてきて!
(居やすいしあたしの被害が軽減されるから!)
「おい、………」
「…あ」
「あ」
散々抵抗をした。
ちょっと死覇装が乱れたそんな微妙な、絶妙なタイミングで。
我が隊・十番隊の隊長のおでまし。
「ひつがや、たいちょう…」
「隊長、になんか用ですか?」
「………」
呑気に返事を返すこのお姉さま。
口を開けたまま呆けている隊長。
ああ、なんか誤解されつつあるようなないような。
そしてみるみるうちに増える、眉間の皺。
あ、ヤバイ…逃げたい、今すぐ。
「…松本」
「はい?」
「その手を離せ」
「えー」
えーじゃねぇ!
怒鳴られても離す様子はないこのお姉さま。
(上司に怒鳴られたのに…!)
若干板挟みなあたしはどいしたら。
ぐるぐる考えが巡る中、二人はひたすら口論中。
「とにかく!飲み会なら吉良でも誘え!」
「がいないと寂しいんですよ」
「阿散井達がセクハラまがいになりかねないだろうが!」
ご最も!
ああ、早く解放されたい。
隊長頑張って、そして早く隊長も去って。
どうせ用件残業なんだから!
(残業デートはこりごりなんです!)
「もうっ!今回は隊長に譲ってあげます」
「(あたしはものか!)」
「さっさと行け」
「はぁい。またねぇ〜♪」
「(また!?また誘われるの!)」
口に出さずに突っ込んでみる。
ああ、体質だなんて泣けてきちゃう。
去り行く乱菊さんを見送り、日番谷隊長を振り返る。
ちょっと怪訝そうな顔。やっばちょっと誤解が…。
「……、」
「は、はい!」
「……早く死覇装を直せ」
ほんのり赤く染まった隊長の頬。
自分の死覇装は割とはだけていた。
あ、しまった。あたし女の子なのに!
「すみません…!」
「いや、いい」
「あ、あの、ところでご用件は…」
急いで死覇装を直して、
きっとあったであろう用件を聞いてみた。
(まあ残業なんだろうけれど)
「………いや、今夜はもういい」
「そ、そう…ですか」
「それより、松本にはくれぐれも気をつけろよ」
ちょっと、いろんな意味が混じってる。
そう感じていたりした。
いや、実際そうなんだけど。
「…じゃあ、おやすみ。」
「おやすみなさい、隊長」
立ち去る背中から思わぬ言葉。
微笑み返すと、ちらりと見てすぐにまた行ってしまった。
うーん、誤解はされてないらしい。良かった。
「(やばかった…反則だろ、あんなの)」
これが計算された行動だと知るのは、少しだけ先。
(ああ、恐るべしお姉さま!)
×××××
日番谷。すごく微妙。
きっと日番谷だってはだけた女の子見たらこうなるよ!
ちょっとだけ思ってみた。
乱菊さんに振り回されればいい。十番隊らぶ。
07/02/04